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『徹底活用 「オンライン読書」の挑戦』 津野海太郎・ニ木麻里編、晶文社 1,800円 (← 表紙をクリックすると、大きな画像が表示されます。) |
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「活字離れが叫ばれて久しい」、という決り文句が、出版界や良識ある文化人のお言葉を徘徊してそれこそ久しいが、残念ながらそれは真っ赤なウソでしかない。 現代ほど活字が流通している時代はない。インターネット、ホームページ、メール、ショートメール、メルマガ……。例えば、深夜に日本中で活字が飛び交う量を考えれば、現代とはまさに前代未聞、空前絶後の活字大流通時代に突入している。 つまり、識者のいう活字離れとは、<出版界の儲けになる活字の流通>のことでしかないだ。 そして、時代は変わった。 その舞台装置の入れ替わってしまった時代の最先端を紹介した本がこれだ。いままで紙というメディアの独壇場であったはずの、古典や学術、そして小説、美術に至る<読書のためのメディア>をいかにデジタルメディアが侵食したかが、ここには詳細に百以上も紹介されている。 例えば、世界的規模で版権の切れた古典を着々と集めている、「プロジェクト・グーテンベルク」。原語のテキストが欲しいとき、シェイクスピアやマルクス、コナン・ドイルに至る古今の作家・思想家たちの膨大な資料が好きなときにダウンロードできて、手に入れられる。しかも、無料だ。 日本の作家のHPもいくつか紹介されている。紙メディアでは読めない、作家の日記や小説、詩が読めたり、作家と質疑応答ができるものまであってファンには垂涎のサイト揃いだ。面白いのは、筒井康隆氏や鈴木志郎康氏など、斯界では鬼才・異才・または真の天才のような感じで呼び習わされている人たちがまずネットに向かったということだ。そして、そのHPがまた面白いのだ。 他にも、展示物の見られる美術館や博物館のサイトなんていうのもごろごろしているし、京都大学電子図書館では貴重な古典籍の画像まで見ることができる。 おっと日本で忘れちゃいけないのが「青空文庫」。版権の切れた芥川竜之介、夏目漱石、幸田露伴などの作家たちはもちろん、島木健作、武田麟太郎など現在の紙メディアではほとんど入手困難な作家の作品まで、幅広く公開されている。しかも、これがすべて無料なのだ。 ここで一つ明かになること。――出版界が、切り捨ててきたもの、そして今までのタブーがここ、デジタルメディアにはあるということだ。特徴を列挙すると次のようになる。 ・ 資料や文学史的な価値は高いにもかかわらず、利益が出ないという理由で切り捨てられたもの(古典籍、島木健作、武田麟太郎……)がある。 ・ 例え出版しても、全部売りきるまでに時間がかかりすぎ、税金などの関係から品切れにせざるを得ないもの(作家の日記・品切れになった作品・詩……)がある。 ・そしてタブーとは、それらがみな基本的には無料(商品価格に上乗せなど、見えないように他に転化されている場合も多いのかもしれないが)ということ。 この三つの特徴は、紙メディアが結局はこてこての資本主義、しかも余り高度ではない資本主義だったということをはからずも明らかにしている。直接利益の出ない本は出さない、作らないという出版界の単純な利益指向により、その場の面白さを追求していく本や雑誌ばかりが溢れ返り……。そして気がつくとデジタルという革命に足元をすべて崩されていたのだ。 そう、デジタルメディアは、<活字情報無料>の革命を起こし、さらに<利益を念頭におかずにさまざまなテキストが紹介していく>という革命もおこしてしまった。 革命はまだ続いている。いや、こんなものはまだ序の口なのだろう。一週間の発行部数トータルが3千万部を超えるメールマガジンなる化け物も、今、ネットでは成長著しい。さらなる革命の大波は目前かもしれない。ともあれ、今現在、活字好きがネットの現状を知り、愉しむには最適な伴侶になるだろう。 |
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文:守屋淳(もりや あつし) 書店勤務を経て、現在は翻訳(共訳に『全訳 武経七書』プレジデント社)・書評などの著述業。『[本]のメルマガ』編集人。 同メルマガのホームページは、http://www.freepage.total.co.jp/anjienji/index.html |
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