| 991215更新 |
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■ ごあいさつ 小説の書き方の本がたくさん並んで,一般公募の懸賞小説にもやたらと応募が来るなんて話を聞くと,小説を読みたい人より書きたい人の方が多いんじゃないかと疑ってしまう。しかし,インターネットでブックレビューを検索してみると,こっちはこっちで山ほどヒットするので,まだ安心なのかも。 『ロンリー・ファイター』 ハーラン・コーベン ハヤカワミステリ文庫 840円 私が最近豪気に入っているマイロン・ボライターシリーズの第四作。 主人公のボライターの職業はスポーツエージェント(代理人です)で,元FBI捜査官,さらにその前はバスケの花形プレイヤーだったという,よくわからん履歴です。元FBIってことで,クライアントが巻き込まれる事件を解決するハメになるのが,毎度おきまりのパターン。 ボライターの親友にして相棒のウィンは,超絶ハンサムにして名家の出身で大金持ち。自分でも投資会社を経営している。しかも格闘技と射撃の名手で怖いもの無し。ボライター達とは普通につきあうのだが,敵対する人間や女性などに対しては冷酷そのものになるという特異なキャラで,作中でも“狂人”などと言われている。こいつがいればボライターは不要って説もあるけど(あるいはスペンサーのホーク説),今回は「ロンリー・ファイター」の題の通り,ウィンが全然協力してくれない状況で事件を調べるボライターの話です。 このシリーズは毎回舞台になるスポーツが違うのだけど,今回はゴルフ。ボライターが,ゴルフの面白さが全く理解できないまま文句ばっかり言っているのが笑える。確かにゴルフって変なスポーツだよね。金持ちメインだし。事件に巻き込まれるのはベテランのゴルファー。新人のときに大きな大会で優勝寸前まで行きながらキャディが間違ったクラブを渡したために敗北。そのまま長い長いスランプに陥り,まったく勝てないままベテランになってしまった男です。こういうのはボライターシリーズの得意パターンですね。ボライター自身もプロバスケの最初の試合で膝の骨を複雑骨折して引退したという経緯があったりする(そのへんは第三作「カムバック・ヒーロー」に詳しい)。このおっさんが突然息を吹き返して,かつて負けた大会で首位を走り始める。ところが息子が誘拐されて,試合に負けろとのメッセージが届く…… ウィンは名門アンド大金持ちなのでゴルフには詳しくて,このおっさんも知り合い(それどころか主催のコースのメンバー。これってモデルはセント・アンドリュースとかかな?)なのだがなぜか協力はしてくれない。 テンポもいいし,ユーモアはあるし,プロットは凝ってて楽しいし,軽妙なハードボイルドに見えるけど,意外と芯がしっかりしている。このシリーズは日本では全然評判を聞かないけど,個人的には,ニール・ケアリーやフロスト警部やリディア・チンのシリーズに並ぶ楽しさだと思います。ちなみに前作「カムバック・ヒーロー」と本作は入手しやすいのだけど,一作目と二作目が全然見つかりません。ちゃんと本屋に並べてけろ。 『短歌パラダイス』 小林恭二 岩波新書 660円 うおー。おもしれえ。 短歌の歌会の本っす。日本を代表する歌人を集めてチームに分けて,決まった題で短歌を詠ませる。それをチーム単位で弁護したりけなしたりして(ディベートですな)それぞれの勝敗を決めるというのが歌会(いや,けっこう違うか)です。この本では,小林恭二が企画した一泊二日の歌会の様子が描かれています。 しかし,知っている歌人は俵万智だけという情けない私でも本当におもしろくよめた。とにかく短歌は一読感動できます。短歌はいいね。同じ作者の「俳句の楽しみ」という,こっちは句会の本もあるのだけど,圧倒的に短歌の方が面白い。短歌は散文的で,意味不明の言葉が少ないからかなあ。俳句だと言葉を極限まで削る必要があるから,遊びに向かないのと,専門用語化しているのが難点。読んでもすんなり感動できない。 うー。短歌作りたいっす。だれかホームページでバーチャル歌会とかやりましょう。 『宇宙消失』 グレッグ・イーガン 創元SF文庫 700円 SFっす。かなりバリバリ。 ある日冥王星軌道の倍もある巨大な球が太陽系を丸ごと囲んでしまって,地球から夜空が消えてしまって世の中大パニック。で,そんな状況と全然関係なさそうに,お話は脳に障害を持った女性の失踪事件から始まります。主人公は「モッドチップ」と呼ばれるチップを頭に組み込んでるんだけど,こいつは脳の神経結線を組み替えて,コンピュータ的な能力を付与してくれるすぐれもの。地図を読み込んで,視覚とリアルタイム合成する機能とか超便利そう。私も欲しいな。全部のモッドチップの製造元と価格が書いてあるのが笑える。こいつが失踪女性を捜し始めるところから始まって,なんか話は怒濤の展開。 で,ネタばらしになっちゃうのでメインアイデアが書けないんだけど,これって凄いよ。いろんなSFを読んだけど,このアイデアは驚天動地のぶっとびものの大ネタっす。大ネタっつーか,そんなことあるわけねーだろ!って誌面に突っ込みたくなるというか,私はびびったね。でも,文系の人間だとまったく理解不能かもしれない。ブルーバックスとか読んでいた(元)SF少年には最高のプレゼントでしょう。うーむ。他の作品も次々と紹介されるらしいので,読まねば。 『インターネットの神々』 生駒孝彰 平凡社新書 660円 主にアメリカの宗教のインターネット具合を調べた本。 あんまり堅苦しくないので気楽に読めます。 アメリカというのは先進国の中では飛び抜けた宗教大国らしい。日本人の無宗教ぶりってよく話題になるけど,ほんとはアメリカが変なんじゃん!と思った。アメリカの宗教界は(つまりプロテスタントということらしい),ラジオ,テレビ,インターネットとメディアを積極的に利用している。宗教専門のラジオ・テレビ局が(普通の局に匹敵するぐらい)たくさんあるというのは日本では考えられないけど,アメリカでは立派なビジネスのようだ。ただ,一世を風靡したテレビ伝道師は最近は流行らないとのこと。飽きられてしまったのか。 アメリカの宗教って生活にも政治にも社会にも深く関わるので,やはり主張しないといけないんでしょうね。キリスト教そのものが布教をメカニズムとして内包していると言うことも無関係ではあるまい。 キリスト教は無数に分派があってよく分からないのだけど,そんなアメリカでも,エホバの証人,モルモン教,クリスチャン・サイエンスは「カルト」に分類されると言う。なるほど怪しいと思った。そのほかの怪しい新興宗教(ヘブンズ・ゲートとか,超越瞑想とか,統一教会とか)の話も出てきて,こういう話の好きなひと(俺だ,おれ)は喜ぶことでしょう。欲を言えば,このへんのディープなところをもっとつついて欲しかったな。 『予測ビジネスで儲ける人々』 ウィリアム・シャーデン ダイアモンド社 2200円 ビジネス書にはときどき面白い本が紛れ込んでいるので,こまめにチェックするようにしているのだけど,これはそういう一冊。世の中には,天候,株,流行,科学技術,景気などを予測するビジネスが存在し,そのために巨額のお金が使われている。本当に“予測”は機能しているのかを検証した本。 この世に存在する“予測”で,なんらかの科学的な根拠を持っているものは極めて少ない。この本によると予測が成立しているのは「短期(2〜3日)の天気予報」と「人口」だけらしい。ただし,天気予報においても長期予報はまったく当たっていない。これは天候が「初期値に対して極めて敏感に反応する」というカオスの特徴を持つからである。にも関わらず長期予報に基づいて農業などでは多額の投資が行われるので,こんなのダメでしょというのが著者の主張です。いや実に興味深いですね。予測で重要なのは「変化点」を示すことです。株価でいうなら「上がります」ではなく,いつ上昇から下降になるか,それを予測する必要があるのだけど,そうした予測を常に成功している例は全くないことが示される。 「歴史は繰り返す」という格言を見ても分かるとおり,人は過去に“パターン”を探し,将来において同じパターンが現れるに違いないと信じているところがある。しかし,科学的な事実は「歴史は繰り返さない」ことをしめしているのであった。 エンジニア必読……とは言わないけど,興味深い問題に興味深いアプローチで迫った本ですね。 『日出づる国の「奴隷野球」』 ロバート・ホワイティング 文藝春秋 1714円 私は心の底から日本の野球システムが嫌い(野球は好きだけど)なので,ロバート・ホワイティングの本は大好きだ。こいつぐらい日本の野球システムを罵る奴ぁいない。「和をもって尊しとなす」とか,「さらばサムライ野球」(これはクロマティの本だけど,ロバート・ホワイティングがほとんど書いているみたい)とか,面白かったもんなあ。 さてこの本は「日本の野球界で,ぼくよりも激しく嫌われている人物」(ご存じ)団野村の話である。団野村は,日本の大リーガー達のエージェント(あ,マイロン・ボライターと同じだ)という非常に興味深い立場にいるが,実際にどんな活動をしているのかは全く知られていない。日本にはスポーツジャーナリズムは存在していないので,報道されることもないのである。ここでは,団と野茂が日本の野球システムに敢然と戦いを挑んだ様子が描かれている。そして,ロッテ球団に徹底的に妨害された伊良部,違法すれすれの野球学校システムでドミニカの選手達をしばりあげる広島のチェコといった選手達の戦いである。まーしかし日本の球団のオヤジたちはなんでこう馬鹿かね。今年からは大リーグへの門戸が正式に開かれたことになっているが,これによって団野村のようなエージェントは介入できなくなってしまったし,大リーグも日本の選手を取りにくくなっている。要するにオヤジ達の悪知恵である。 ロバート・ホワイティングによれば,日本の野球システム(少年野球からプロまでを含めてすべて)が健全でないため,一昔前に比べて大リーグで通用しそうな選手がめっきりと減った。確かに現状だと投手が数人,野手はほとんど全滅でしょう(ホワイティング説だと,巨人と西武のダブル松井と,イチローだけ)。優秀なやつは野球なんて選ばないしね。そして野球はオヤジのスポーツになり,やがて死んでいくのだ。 |
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| 文:松永肇一 コンピュータメーカでインターネット関連のお仕事中。趣味は疑似科学と格闘技。とか言いながらテレビ東京の「刑事ナッシュ・ブリッジス」を心の支えにする毎日です。 E-mail:lee@lares.dti.ne.jp |
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企画制作協力: B-plan;アジール・プロダクション |