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■ パソコンといえば... 「あなたは、どんなパソコンをお使いですか」と尋ねられたら、あなたは何と答えるだろうか? 「デスクトップ型で、CPUはこれこれで、HDとメモリはこれだけで…」「自作のマシンで、これこれのマザーにK6-2を載せて、クロックは300MHzで…」「VAIO」「iMac」「高倉健」……。バリエーションはいろいろあるだろうが、一般的にはこのように「パソコン=ハードウェア」と捉えた答えが返ってくるだろう。 「パソコンを使う」ということは、正確には「ハードウェアとOSのセットの上でアプリケーションソフトを使う」ということなのだから、返答の中でOSについて触れられないのは変だとも言える。しかし、現状ではちっとも変だと思われない。なぜなら、パソコンのOSと言えば、WindowsシリーズかMacOSのことなのだから。Apple社が互換機路線をやめて久しい今、MacOSはMacintoshでしか走らないので「Mac」と言えばMacOSだし、言わなければ、WindowsシリーズのOSなのだから、いちいち「OSはなになにです」とことわる必要がないわけだ。 いや、もちろんこれは間違っている。パソコン用のOSにはWindowsシリーズとMacOS以外にも、LinuxなどのUNIX風OSや、OS/2、BeOS、B-TRON、昔ながらのDOSなど、各種のものが使われているし、エミュレーションソフトを使えば、MacintoshでWindowsを動かしたり、AT互換機でMacOSを動かしたりもできる。ホントはね。 しかしやっぱり世間では「Macはデザイナーとか特殊な仕事の人たちが使う『Mac』で、ちょっとパソコンとは違うよね。Windows95/98でExcelやWordを使うのが『パソコン』でしょ」というのが「常識」である。ウソだと思うなら書店に行ってパソコン雑誌のコーナーを見てみなさい。『パソコン』とか『PC』という名の付く雑誌はほぼすべてWindows系の話しか載っておらず、Macの話題は『Macなんちゃら』というタイトルの雑誌でしか扱われない。『パソコン』と『Mac』は別のモノなのだ。まして他のOSなど、存在すら無視されているような状態だった(最近はLinuxやBSD系のUNIX系OSが注目を浴びており、状況が変わりつつあるが、まだまだ一般にはマニアのおもちゃと見られている感じである)。 ■ インターネットワールドでは、Windowsは嫌われ者 このようにWindowsシリーズが独占に近い状態でOS市場を占有している中で、それに比例するようにマイクロソフト社とビル・ゲイツ会長を批判する声も大きくなっている。もちろん広告という生命線を握られているマスコミでは批判的な情報は伝えられにくい。しかし、実際にそれらの製品を使用するパソコンユーザーは、今ではインターネットという武器を手にしている。 インターネットの中(ウェブやネットニュース)では、マイクロソフト社とその製品については評判がいいとは言えない。マイクロソフト社を批判したウェブサイトもたくさんある。 マスコミからの情報しか知らない人がネットこの状況を見たら「なぜこれほど批判されている会社の製品が売れているのだろう?」あるいは「多くの人が購入しているものなのに、なぜこれほど批判されるのだろう?」と疑問に思うだろう。 ■ 自由で楽しいコンピュータのために 本書『マイクロソフト・シンドローム』は、その疑問への一つの回答を与えてくれる。 本書の著者は、外崎則夫氏と梅津信幸氏のふたり。いわゆる共同執筆という形ではなく、前半が外崎氏のパート「がんばれ!!ゲイツ君」、後半が梅津氏のパート「窓ト林檎ノ物語」と、はっきり別れている。 おふたりはそれぞれ、インターネットのホームページを運営しており、この本のもととなる文章を書いていた。そこに掲載されている文章がなかなか面白いと評判で、めざとくチェックをいれた編集者から声がかかり、まとめなおしたというのが本書出版の経緯だという。つまり、上述した「インターネット上でのマイクロソフト批判文化」が、紙の出版にまで進出してきたというわけだ。 マイクロソフト批判、と簡単に書いてしまったが、その内実には製品そのものへの批判という面と、いわば「現代のコンピュータ文化の象徴」として同社への批判という面の、2面がある。本書は、この2面のバランスがいい。本書の主題は、裏表紙にあるセリフ「みんなのコンピュータが楽しく幸せになることを願って祈って」に表されているように、現状のコンピュータ文化への異議申し立てだ。こういうテーマで難しいのは、ソフトウェア技術の専門的な話だけをされても一般の読者はついていけず、社会学的なお話だけではリアリティが薄れてしまうことだ。 その点、本書の著者はしっかりした技術的知識の背景がある上で、コンピュータをとりまく環境、文化を語っているので、説得力のある「現代コンピュータ文化批判」となっている。「文化批判」などというと堅苦しい本のように思われてしまうかもしれないが、実際は、軽妙な文章とわかりやすい語り口で、すらすら読み進められる。多少の毒が込めたユーモアがちりばめられ、読みながら思わずにやりとさせられることも多い。そうして読み進めるうちに、「なるほどマイクロソフトが嫌われるのはそういうわけか」とわかる仕掛けだ。ただし、本書の主旨は、マイクロソフト批判なのではなく、「一部の企業の都合で押しつけられた製品ではなく、自由に、楽しくパソコンを使いたい」という願いなのだ。 まったくのパソコン初心者では理解できない部分も多いかもしれないが、使い初めて半年〜1年ほどで、ある程度の知識が付いてきたユーザーなら、勉強になることうけあいである。ソフト、ハードメーカーの方たちには必読といえるが、言わなくてももう読んでるだろう。 |
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| なお、外崎氏のホームページ「がんばれ!!ゲイツ君」はこちら、 梅津氏のホームページ「真・窓と林檎の物語」はこちらで、現在も運営中です。 |
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| 文:椎原芳貴(アジール・プロダクション) |
企画制作協力: B-plan;アジール・プロダクション |