book_icon02.jpg この本屋さんに行こう! 02/04/30

第二十八店

長谷川書店 (長野県長野市)

― キャリアが武器!老舗書店の底力 ―

image01 「本屋さん」がどんどん姿を消している。
 大型書店に淘汰され、昔からの本屋さんがいなくなる。我が家の近くにも近年大型書店が2軒たて続けに出店し、本を手に入れたければ必然的にその2店舗を訪れるようになった。
 広いフロアに並べられた夥しい本。ベストセラーや話題の新刊のためには特別コーナーを設け、レイアウトを工夫してなんとも格好良い。が、これと思った本を探しに行くと、何故か見つからない。
 仕方なくカウンターに行き、書名を告げて在庫を聞く。にこやかな店員さんがパソコンで手早く調べ、お取り寄せになります、と答える。「こちらに必要事項をご記入下さい」とフォームの決まった用紙を渡され、書いていると背後に並んだ客に「次の方どうぞ」とやはりにこやかに声をかける。
 漠然と淋しい気持ちになり、何気なくかつて夫に連れられて行った長野市の長谷川書店の様子を思い出す。あまり人気のなさそうな、新聞の書評で目にした本を探しに店内に入り、それほど探し回ることもなく目的の本を見つけたばかりか、いくつかの新聞や雑誌で玄人向けの書評を目にした記憶のある本があちこちに並んでいた。
 そういえばあの書店の目と鼻の先にも、大型書店の大きなビルが建ったはずだ。今どうしているか…。気になった。
image02  先日、久々に足を運んでみた。さりげなく店に入り、整然とした明るい店内をぶらついてみる。各分野の、ことごとくツボを押さえた品揃え。その的確さは声を上げたくなるほどに小気味良い。
 ちらちらと様子を見ていると、ほかの書店ではみられない光景を目にすることができた。お客さんがいちいち本についてカウンターに問い合わせ、専門的かつ丁寧な応対が繰り返されている。
 長谷川書店といえば、会長・長谷川新太郎氏の人柄により、長年地元で慕われてきた老舗と聞く。残念ながらその「名物」会長さんはご不在だったが、店頭に立ち、お客様の応対に追われる滝沢道雄社長にお会いすることができた。
「武器はキャリア」品のいい笑顔を浮かべた滝沢社長は、柔らかながら自信に満ちた口調でそう言い切る。「お客さんとの対話の中で長い間勉強してきた知識が武器なんです」
 大型書店と違い、在庫としておける冊数は限られている。その中でのあまりに的確な品揃え。それがベテランの「本屋さん」としての経験のなせる技なのだというのだから、老舗は侮れない。
 国土地理院の地図を置く限られた店舗のひとつであるだけでなく、もともと専門書の品揃えを特色とする書店であった長谷川書店だが、大型書店の進出により、専門書フロアであった2階は閉めざるを得なくなり、ギャラリーに模様替えされた。が、このギャラリーも、内容の確かさでまた話題を呼び、新たな人気のもとになっている。
 とはいえ他所で手に入るようになったと思っていた専門書がやはり見つからなかったと、この書店を頼ってくる客もいまだに多い。
 専門知識をもつ客から話を聞くことで、その分野についての知識を得る。その積み重ねで作り上げられたキャリアなのである。合理化の行き届いた小奇麗な大病院と、長年人々と対してきたベテランの町医者。病気を診てもらうならどちらを選択すべきか?価値観の違いもあるだろうが、私なら後者を選ぶ。
 読者の喜び、読まれる本の喜び。それを熟知した、土地に密着した本屋さん。それが長谷川書店だ。本好きとしては心から大切にしたい1軒である。 image03

長谷川書店
住所 : 〒389-0206 長野県長野市末広町1356
電話 : 026-226-2122
FAX :026-226-2135
営業時間:平日 :10:00〜20:00
土・日:10:00〜19:00

文:清水美絵香(しみず・みえか)
フリーライター・アマチュア小説書き
得意分野は文学・映画
E-Mail:white@po3.ueda.ne.jp
ホームページ :http://www3.ueda.ne.jp/~orangeexpress/
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