|
|
|
01/08/30 |
|
第二十三店 ひつじ書房 (兵庫県神戸市東灘区) ― 「いい本の出会い」は「良き書店との出会い」 ― |
||
皆さんが読書に接するようになったきっかけは何だったでしょう……?
いきなり質問から始まって恐縮ですが、今回訪れたひつじ書房の代表、平松二三代さんにお話しをうかがっていて、ふと自分の読書体験を振り返ってみた。家族が読書好きだったため、常に本が身近にあったこと。特に祖母が読書家で、彼女が選んだ書物を与えられていたこと。自分で好きな本を選ぶようになったのは、学校に入ってからだけど、やっぱり子どもにとって「本」との出会いは大人の影響が大きかったなぁ。神戸市の中でも文教地区である岡本に初めて子どもの専門書店ができたのは、今から26年前の3月。昔と変わらぬ入り口の木の看板やステンドグラス、店内のシャンデリアが、暖かな雰囲気を醸し出している。10畳ほどの店内には「昔話」「童話」「古典・世界名作」といったジャンル別に約7000冊もの書物が並ぶが、子どもが手に取りやすいように平置きしてあったりと配慮が細やかなため、書店にありがちな「本が所狭しとぎっしり棚に詰まった」圧迫感を感じない。取材時にもお客様はひっきりなしで、親子連れ、自分のために買いにみえた大人と次々と訪れ、平松さんはレジを打ちながらお客様とコミュニケーションを図っている。対話することを心がけておられるそうだ。お客様とのいい関係を築いておられるようですね、との問いに「そうですね、今では親子2代、3代にわたってのお客様も多いんです」と平松さん。
本についての相談が多いため、平松さんお勧めの本のタイトルやお勧めポイントを0才から大人までの年齢別にまとめた冊子『子どもと絵本の出会いのために』や、季節ごとに『ひつじのじひつ』と題した本選びに役立つガイドを手書きで作っている。それらに載せるお勧め本選びのポイントは、出版社が選定している年齢別にこだわらず、内容重視。「記憶力や想像力も未熟な子どもが、大人の視点で感動した本を与えたって理解するのは困難でしょう? それに、選定年齢をしていても、子どもたち、一人一人の読解力には差があります。小さい子どもさんには言葉のリズムを楽しめるような本という風に、自然に物語の世界に入れるような本がいいですね」。平松さんは、ただ子どものために本を提供する「本屋さん」でなく、子どもたちが読書好きになれるような本と出会えるように、日々努めている。その真摯な姿勢が、先に述べた手書きのガイドや、仕入れる書物には取次任せにせず必ずチェックを入れ、子どもが手の届く棚には読んでもらいたい本を平置きする、といった所にあらわれている。日本は児童文学を研究し、児童書について良いアドバイスを与えてくれる人材が少ない、と嘆く平松さん。また児童書自体も、大人が読書対象となるような高度な書物が多くなり、ますます選定困難な状態だそう。だからこそ、子どもの本についてアドバイスができる人材が育成できるような、そして子どもの本について考えられるような機会を、書店活動以外で設けることできれば…と熱く語ってくれた。
取材最後に、お客様がイラスト・コピーを作ってくれたという書店チラシをいただいた。やわらかな羊のイラストと「あなたの忘れていたものに出会えるかもしれません」というコピーが、平松さんと書店の雰囲気にぴったりと当てはまっていたし、私自身、ほんのちょっぴり忘れていた小さい頃を思い出すことができた。遠隔地からの相談・発送も受け付けるので、ぜひ一度利用していただきたい。
ひつじ書房 住所:〒658-0072 兵庫県神戸市東灘区岡本1-2-3 電話:078-451-1734 FAX:078-441-5056 営業時間:10:00〜19:00 定休日:木曜 URL:http://www20.freeweb.ne.jp/shopping/hituji3/ |
|
文:山崎元子(やまさき・もとこ) 関西在住のライター。書評・映画・グルメならおまかせ! E-Mail:genko@pc.highway.ne.jp |
|
◆ トップページ |
◇ バックナンバー |
企画制作協力: B-plan;アジール・プロダクション |